「聞こえないよ。何?」
受話器から聞こえる母の声は決まってそんな言葉です。
「おばあちゃん、元気?」
「はあ? 何だか聞こえないから、もう切るよ」
いつも一方的に電話は切れてしまいます。耳が遠くなったおふくろですのでしかたがないとはいえ、息子としては一抹の淋しさを禁じえません。しかしながら、本音を言えば、淋しいけれどもそれだけでもう満足なのです。おふくろの声を聞いていると、思わずおふくろと一緒に過ごした幼い日々のことが蘇ってくるからです。
いい歌でありさえすれば必ずヒットする。歌にとって、これがあるべき姿です。しかし、現実にはいい歌であるということは、ヒットするための必要条件ではあっても“十分条件”では決してありません。いい歌だったらヒットする。これが必要条件ではなく、十分条件になるためには、その前提として、どんな歌でも平等に一般ユーザーの耳に触れる機会がなければなりません。ところが、残念ながら、現実の音楽界の仕組みはそうはなっていないのです。いろいろな絡みによって、オンエアされるか否かが決まってしまう。ここにこそ、いい歌でさえもヒットしないという構造的欠陥があるのです。
5月17日(日)の夕方、私は故郷・長野県須坂市にある須坂メセナホール・大ホールのステージに立っていました。拍手を受けて一拍おいてから、私は話を続けました。
「今回で4回目を迎える<フォーエバーヤング>、これから始まりますが、その前にひとつ、皆さんにうれしいお知らせがありますので聞いていただけますか……」





