POP CLASSICO/松任谷由実
ユーミンの2年7ヵ月ぶりのニュー・オリジナル・アルバムですが、彼女のすごいところは今でも「昔の名前で出ています」にはならないということです。今年のユーミンは40年前にリリースされた「ひこうき雲」が宮崎駿監督作品「風立ちぬ」の主題歌に起用され、思わぬ脚光を浴びましたが、そんな中でこのニュー・アルバムを出し、さらに進化し続けているところを見せてくれたことです。このアルバムを聴くと、ユーミンのめざす新しい〈ポップス〉のイメージが湧いてきます。デビューして40年というキャリアに立つポップスの奥深さに脱帽です。
生きている/松山千春
松山千春の3年半ぶり通算37枚目のオリジナル・アルバム。千春が「旅立ち」でデビューしたのは1977年1月25日のことですから、今年で37年目に入ったことになります。ということは、デビュー以来37年間、毎年1枚はオリジナル・アルバムを出してきたことになります。歌は己れの自己表現だ、と思います。何か言いたいことがあるからこそ、自分の言葉で詞を書き、曲をつけ、肉声で歌うのです。つまり、シンガー・ソングライターにとって大切なことは、言いたいことがある、ということです。その意味で、千春の歌には今の千春のメッセージが凝縮されているのです。
RESPECT Ⅱ/ダイアモンド☆ユカイ
「この曲はこんなふうに歌ってくれたらいいな」とか「この曲はこんな感じで歌うべきだ」とか「この曲をもし私が歌うのだったらこう歌うのに」とか、カバー・アルバムを聴くときはいろいろと考えるものです。しかし、自分が満足できるものはほとんどないのが現状ですが、このアルバムは違います。「この曲はこうあって欲しい」という私の“理想の歌”がここにあるからです。曲の芯をとらえて一本筋の通った骨太な歌になっていて聴きごたえは十分です。いい曲はそれにふさわしい歌い手に歌われて初めて“いい歌”となってたくさんの人々の胸を打つのです。
心絵~人が空を見上げる時~/せきぐちゆき
「素顔~愛すべき女たち~」「衝動~魔物が暴れ出す時~」という2枚のアルバムを作ったことで、せきぐちゆきは確実に〈せきぐちゆきワールド〉ともいうべき歌世界を確立したようです。いってみれば、シンガー・ソングライターとして自分なりに筋を通すことができたということです。だからこそ、現在の彼女は“フリー”なのです。何をやってもいい、ということですが、それは裏を返せば、何をやっても“せきぐちゆき”になるということで、あの2枚のアルバムを作ったからこそ肩の力を抜いてできるということでもあるのです。そんな自由さが魅力です。
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