私はかつて「チャンスのつかみ方」ということをテーマにして、何人かのアーティストに取材をしたことがありますが、彼らは「チャンスのつかみ方」を人生訓的に語った後に、一様にふっと笑ったものです。
たとえば長渕剛の場合は──。
「チャンスのつかみ方?」
身を乗り出して、長渕は話し始めました。
「やりたいと思っている路線で、まず出てみることだね。コンテストに出てみることだね。そうすれば自分の位置がつかめる。出て落ちたら、受けているものが何だかわかるから、その裏側、つまり、受けていないものの中で自分しかできない切り口を捜す。それが間違いなく自分のオリジナリティーになるね」
ふつうは受けている曲を分析して、受けそうな曲の傾向と対策を考えるが、彼は違っていました。ここに彼の深さはあるのです。
ZARDの坂井泉水さんが亡くなった、と聞いたとき、信じられませんでした。なぜかというと、「負けないで」など“人生応援歌”で聴き手に“勇気”と”元気“を与え続けてくれていた“さわやか”イメージの彼女は“死”から最も遠い存在だったからです。
彼女は聴き手に最も近いアーティストだった、と言っていいでしょう。



