富澤一誠の「俺が言う!」
音楽評論家 富澤一誠氏の 「俺が言う!」を掲載していきます。
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“期待値”とそれに対する“応答値”を自分なりに理解できている人が“できる人間”なのです!
“期待値”という言葉があります。“期待”とは「あてにして、心待ちに待つこと。将来この事が実現すると考え、待ちかまえる」(岩波国語辞典第三版より)という意味です。つまり、簡単に言ってしまうと、“期待値”とは“あてにしたい度数”ということでしょう。
 期待値はいろいろあります。たとえば初めてのコンサートに行くとしましょう。何しろ初めてのアーティストのコンサートですから、否応無しに期待値は高まります。そして、結果が予想していたよりはるかに良かった場合は「入場料は高かったけど行って良かった。満足しました」ということになります。しかし、逆に予想していたより悪かった場合は“不満”ということになります。「期待はずれだった。あんなに高い入場料を払って損をしてしまった」ということになります。このときは、あてがはずれてしまっただけに、大いなる不満を抱くことになるでしょう。
 これは何もコンサートにかぎったことだけではありません。期待値はCD、映画、本、レストラン、ファッション、車などあらゆる物にあります。すなわち、期待値がある以上、私たちは勝手に“あてにしたい度数”を自分で決めてしまっていますから、この度数をオーバーしてくれないと“不満”を感じてしまうという訳です。
きびしい現実を“優しく”させるには、自分の見通しを辛くすることです!
 産経新聞に「断」というコラムがあります。2008年3月14日(金)付けのコラムを医師であり作家の久坂部羊さんが「最悪の説明の効用」というお題で書かれていました。このコラムにドキッとさせられる箇所がありました。それは以下の通りです。
〈今は少しでも危険のある治療や病気の説明は、実際以上に悪く言うことが多い。危機管理とは最悪に備えることだ。希望的観測は相容れない。できるだけ悲観的に見ていたほうが、現実は人に優しい。〉
 まったくその通りだと思います。特に〈できるだけ悲観的に見ていたほうが、現実は人に優しい。〉というフレーズには、瞬時にしてハートを奪われてしまいました。なぜかというと、確かにその方が“現実は人に優しい”と思うからです。
 私たちはともすれば、現実という壁にぶつかったとき、はね返されたり押しつぶされたりします。その意味では、まさに現実は人にきびしいのです。だが、本当にそうなのでしょうか?と、私は心の片隅でいつも思っています。でも、それは裏を返せば、私たちが現実を甘く見すぎていた、ということに対するしっぺ返しでもあるのです。
自分の人生のギア・チェンジは他人に頼るのではなく自分がしなければなりません。なぜならば、自分の人生の運転手は自分自身だからです。
 自信がないときは他人に頼りたくなるものです。また、自信がないときほど他人のせいにしたくなるものです。しかし、それではいけないのです。そして、そのことは自分自身が一番わかっているくせに、それでもなお他人に頼ったり、他人のせいにしてしまうのはどうしてなのでしょうか?
 はっきり言って、自分が弱いからです。そのことを認めたくないものだから、他人のせいにして、自分を正当化してしまうのです。いや、慰めてしまうといった方が的確かもしれません。俺(私)はこんなに頑張っているのに上手くいかないのはまわりが悪いのだ、と思いたくなる気持ちはわかります。かく言う私とてそうです。自分の思い通りにいかないと、その責任を他人のせいにしたくなります。上手くいかないのは、あいつに頼んでおいたのに、あいつがきちんとやってくれないからだ、と思いたいことはたくさんあります。しかし、冷静に考えてみれば、やってくれない相手が悪いんじゃなくて、一番頑張らなくてはいけないことをやらないで、他人に頼ってしまった自分が悪いんです。これはいつも言っていることですが、あなたが不満を感じていることがあるとすれば、あなたの“不満”の原因はあなた自身が作っているのです。このことがわからないかぎり、他人のせいにし続けて、あなたの不満が解消することはきっとないでしょう。
世の中、腹の立つことばかりです。だからこそ、心を浄化して癒してくれる歌が必要とされているのです。
 失恋ソングばかりを集めたコンピレーション・アルバム『TEARS』シリーズは3枚出ていますが、トータルで30万枚以上売れてベストセラーになっています。その意味では、手前みそながらプロデューサーとしては、うれしいかぎりです。しかしながら、ふと考えることがあります。それは失恋ソングばかりを集めた、いわば“暗い悲しい歌”を人はなぜ好んで聴くのか?ということです。確かに失恋をテーマにとった歌は、同じような体験をしている人が多いので共感を得やすいことはあると思いますが、それにしても失恋という悲しい体験を“失恋ソング”という劇薬で中和するということでしょうか?
『TEARS』の最新作『TEARS J-POP Selection』を聴きながら、そんなことを考えているときに、ふと買いおきしておいた五木寛之さんの『人間の関係』(ポプラ社)という本が目にとまったので、『TEARS』を聴きながら読むことにしました。すると目から鱗が落ちるフレーズがありました。五木さんはこんなふうに書いています。
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