「navy&ivoryさんの『指輪』を初めて聴いたときに、“約束します 君を残して僕は死ねません”というフレーズがやっぱり一番強いなって思ったので、男性のそこまでの愛情を受けたら、女性はどうするか?私だったら?と思ったんです。そうしたら、“ありがとう”で終わってしまうんじゃなくて、私だって強くなってあなたのこと守りたいし、あなたが帰ってくる場所を作っていたいし、と考えているうちに、“あなたを残してあたしも死ねません”というフレーズがパッと浮かんできたんです」
彼女の“ものの見方”が独創的だということですが、これは素晴しいアーティストであるための強力な条件のひとつです。そんな彼女の独特の“ものの見方”がアルバム「センチメンタル」を聴いていると随所にうかがうことができます。
例えば「ヒトシズク」。これを聴いていると“寂しい”“切ない”ということを深く考えさせられます。寂しい、切ない、はひんぱんに言葉としては使いますが、内容を突きつめて考えたことはあまりありません。しかし、彼女はそこを見事に解明してくれます。
「高校2年のときにデビュー準備のために私、大阪から東京に出て来たんです。そのときに初めて“寂しい”って感情だったり、“切ない”って感情を本当に思って、こういうときにこういう言葉を使うんだなって感じたんです。大阪から新幹線に乗って品川で降りて、そこから山手線でお家に帰るんですけど、着いても部屋はひとりなので暗いままで“おかえり”っていう言葉もなくて、そういう自分が体験したことをそのまま正直に歌にしました」
等身大のリアリティーだけに、瞬時にして同世代の人たちの心を奪ってしまうということでしょう。
もう1例。「小悪魔BOY」はダメンズウォーカーですが、女性の本音がズバッと表現されています。女性の本音は“君がいなきゃダメ”よりも“君じゃなきゃダメ”。
「君がいなきゃダメって言われても、それは他の人にも言えるセリフじゃないですか。でも、君じゃなきゃダメって言われたら、私じゃなきゃダメなんだなって思えるから、それくらいの安心感が欲しいって思ってしまう女子の気持ちをわかってもらいたいなって感じですね」
いずれにしての彼女の“ものの見方”は女性の滞在下で思っている本音を鋭く突いているので、等身大のリアリティーがあるのです。だからこそ、同世代への〈エールソング〉なのです。沢井美空、19歳。独特の“ものの見方”を持つ末恐ろしいシンガー・ソングライターです。
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