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美空ひばりという“音楽文化遺産”を歌い継ぐさだまさしの“使命”について考えること 

 美空ひばりは“音楽文化遺産”である、と私は考えています。しかも“国宝級”の音楽文化遺産です。だとすれば、それを後世に伝え続けるという“使命”が存在します。しかしながら、その使命をこれまで果たそうとするアーティストはいませんでした。なぜかというと、歌謡界の女王という名を欲しいままにした“国民的歌手”美空ひばりの歌をカバーして歌うなどということは、あまりにもおこがましくて腰が引けてしまったからです。だから、どんなに高名な歌手でも神に触れてしまうかのように怖れて真正面から取り組むことができなかったのです。
 確かに彼女は偉大です。彼女の歌にはどの曲にも彼女が存在しています。だからこそ、彼女の存在を払拭して、自分なりのオリジナリティーを出すことは不可能だったのです。美空ひばりの歌はひばりにしか歌えない。これが不文律だったのです。その不文律に敢然とチャレンジしたのが、さだまさしです。さだは1曲どころか、ひばりの代表曲12曲にチャレンジして、『情継』というカバー・アルバムを作り上げました。「神をも恐れぬ無謀な行為」と揶揄する人たちもいます。さだとて5年間もこの企画に尻込みしていたそうです。だが、心を決めました。おそらくさだは、ひばりという音楽文化遺産を受け継ぐことは自分の“使命”だと悟ったのでしょう。さだは言います。
「『日本のスタンダード』をカバーすることで、『歌い継いでいかなければいけないもの』を残して行きたいと思った。僕たちシンガー・ソングライターが日本の歌謡曲の奥行きを残して行かなければならない」
 カバーするにあたって、さだが取った方法は譜面通りに歌うということでした。ひばりの原曲を聴いてしまうと、その強い個性に引っ張られて“なぞってしまう”と考えたからです。どんなに素晴らしい歌手でも引っ張られてしまうひばりの個性。この“壁”を超えないかぎり、カバーは成り立たないのです。その方法論として譜面通りに歌うことを選択したさだは、譜面通りに歌いながら、さだのふだんの個性を貫き通しました。その結果、さだならではのあたたかみにあふれた聴き手の心を癒してくれるさだ独自の世界を確立することができたのです。ひばりに挑戦するのではなく、ひばりの曲を通して、さだのひばりに対する尊敬の念を愛情というエネルギーにして歌うことができたからこそ、さだはさだたりえたのです。さだまさしもある意味では“国民的歌手”です。国民的歌手・さだまさしだからこそ国民的歌手・美空ひばりの“情”を歌い継いで、音楽文化遺産を後世に残せるのです。
 自分のやりたいことをやり続けることは素晴らしいことですが、自分を育ててくれた音楽そのものや先輩アーティストたちに敬意を表して、その“音楽文化遺産”を引き継いで後世に残すということもしなければなりません。その意味では、私も“音楽評論”という“音楽文化遺産”をどう引き継いで後世に残したらいいのか?と真剣に考えてみなければいけない年代にきているようです。消費される音楽ではなく、音楽文化遺産として残る歌を、これからも紹介し続けていこうと思っています。
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category: 俺が言う!

2008/11/18 Tue. 10:18 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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