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ドキュメント「夢は眠っていないか?」Part.Ⅶ アリスの谷村新司がすべてだった時代の“夢”は眠っていないか? 

 都内に“春火”というラーメン屋がある。その界隈ではうまいと評判の高い店だ。そこに田中香里という女性がいる。その店のマスターの妻君である。
 彼女が現在のご主人と結婚式を挙げたのは25歳の誕生日を迎えて5日目のことだった。彼女は結婚するなら24歳までにしたいものだ、と思っていた。
 24歳までに結婚する、という悲願を彼女が達成しようと思えば可能だった。それまでにも彼女に好意を寄せてくれる男性は何人かいたからだ。しかしながら、それらの男性の誘いを彼女はことごとく断ってしまう。なぜなら、彼女には4年越しの“恋人”がいたからだ。とはいっても“片想い”だったが……。その片想いの恋人の存在があまりにも大きすぎたがために、好意を寄せてくれる男性が現れても彼と比較してしまって乗り気にはなれなかったというわけだ。
 その片想いの恋人が“アリス”の谷村新司だった。彼女が谷村と知り合ったのは、いや正確にいうなら、谷村を知ったのは1974年の春のことだった。その前年の春に、高校を卒業した彼女は故郷を後にして上京、都内のあるスーパーに就職した。1年目は会社の寮住まいだったが、2年目になるとアパートでひとり暮らしを始めた。深夜、淋しさを紛らわそうとラジオのスイッチを入れた。すると突然、低音で関西訛りのソフトな話し声が聞こえてきた。彼女は“ドキッ”としたと言う。
「ものすごくセクシーでした。関西訛りのいいまわしがソフトで、そのまま引きずり込まれてしまいそうでした」
 こうして彼女は谷村新司を知り、そのパーソナリティーに魅せられてしまう。そのうちにアリスというグループもやっていると知って、コンサートも見に行くようになる。アリスのコンサートを初めて見た彼女はすぐにファン・クラブに加入する。
 「あの頃は、谷村さんが私のすべてでした。理想の男性像だったし、憧れの人でしたね」
 会社から帰るとアリスのレコードを聴き、谷村の書いたエッセイ集を読み、雑誌に載ったアリスの記事をきれいにスクラップする毎日が続く。
 しかし――破局が突然に訪れる。谷村が結婚してしまったのだ。その日、彼女は自分の部屋に閉じこもり、一晩中アリスのレコードをかけながら泣き通した。谷村さんが結婚してしまった――そう思うと涙がとめどなく流れ落ちた。そして、彼女は「谷村さんは私の理想像だったけど、恋人ではありえない」という現実を思い知らされるのだった。
 その日を境にして、憑き物がおちたかのように彼女の心から谷村が消えてゆく。現実に引き戻された彼女に待っていたのは“23歳”という女性の“現実”だった。田舎の母親は「いい人はいないのか」と矢の催促をするようになる。
 79年にお見合いをして4ヶ月のスピード結婚だった。谷村が結婚した段階で、谷村に対する彼女の恋心は消えて、アリスの“音楽”だけが残っていた。だから、結婚しても気が向いたらアリスのレコードを彼女は聴いていた。しかし、それも長男が生まれるとなくなってしまった。家事、育児に手間をとられて音楽を聴いている時間がなくなってしまったからだ。
 早いもので、あれから27年という年月が経ってしまった。アリスの谷村新司がすべてだった時代の彼女の夢は眠っていないか?
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category: 俺が言う!

2009/11/09 Mon. 19:15 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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