私はかつて「チャンスのつかみ方」ということをテーマにして、何人かのアーティストに取材をしたことがありますが、彼らは「チャンスのつかみ方」を人生訓的に語った後に、一様にふっと笑ったものです。
たとえば長渕剛の場合は──。
「チャンスのつかみ方?」
身を乗り出して、長渕は話し始めました。
「やりたいと思っている路線で、まず出てみることだね。コンテストに出てみることだね。そうすれば自分の位置がつかめる。出て落ちたら、受けているものが何だかわかるから、その裏側、つまり、受けていないものの中で自分しかできない切り口を捜す。それが間違いなく自分のオリジナリティーになるね」
ふつうは受けている曲を分析して、受けそうな曲の傾向と対策を考えるが、彼は違っていました。ここに彼の深さはあるのです。
「人との出会いも大切だね。この人を信じて預けてみようという気持ちね。そして、上に行くためには、人情やしがらみを断ち切って、その人に背を向ける勇気も……」
そう言って、ひとつ大きな溜息をつきました。そして熱い口調で続けました。
「愛や自由を得ようと思ったら、わがままをおさえてがまんしなきゃ……。不自由さがあるからこそ自由になったときにうれしいんだし、それと同じように、夢はなかなか手にすることができないからこそ、よけいに大きな夢を持てるんだよ」
言い終えて長渕はふっと笑いました。おそらく彼には自分というものが見えたのではないでしょうか。「夢はなかなか手にすることができないからこそ、よけいに大きな夢を持てるんだよ」ということは、彼が自分の体験の中から得た人生訓なのです。だからこそ、彼はそれを言葉にしたとき、ふっと笑うことができたのです。その笑いの背後には、人生訓を言ってしまったという照れと、その裏返しの自信が同居しているはずです。だから、高笑いでもなく、そうかといって苦笑いでもなく、照れ笑いに近い、“ふっと笑い”が自然とでたのでしょう。
CHAGE&ASKAのASKAは「チャンスっていうのは、その人の持っている運が90パーセントで、残りの10パーセントが才能じゃないかなってぼくは思うんだ。いずれにしても、運がむいてきたな、と思ったらまずやってみること。もちろん、そのための努力を惜しんだらダメだけどね、いくら運があったって……。だから、やりたいことをやるための苦労だったら、いくらでもしようと思っています。それが成功するための唯一の道だからね」と言って、ふっと笑いました。
長渕剛、ASKAは「まだ若いのに偉そうなことを言ってしまっていいのだろうか」、そんな自責の念にかられながらも、体験の中から得た人生訓を控えめに披露してくれました。照れ隠しにふっと笑いながら、控えめに語る“現役”ならではの新鮮さと輝きがあるのです。「なーんだ、そういうことだったのか」。彼らの人生訓を聞いてそう感じたとき、あなたはきっと“ふっと笑える”はずです。そして、そのとき確実にヤル気になっているはずです。

