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震災のことを歌にするのはものすごく大変です。でも、このテーマを省いて、次のテーマに、というわけにはいかないんです! 

 「遠い世界に」で知られる“五つの赤い風船”のリーダー、西岡たかしが7年ぶりにソロ・アルバム『おくのほそ道 抜粋』をリリースしました。「おくのほそ道」といえば俳人・松尾芭蕉の有名な紀行文ですが、アルバム・タイトルがなぜ『おくのほそ道 抜粋』なのか?西岡は語ります。
 「古典も勉強しようかということで、松尾芭蕉さんの『おくのほそ道』を読み始めたんですが、3・11が起きちゃって。で、今年になって改めて読み始めたら、芭蕉さんが『おくのほそ道』で行った所って被災地じゃないかって気づいて、もしもこれを歌にできたら、もちろん芭蕉さんの書いた言葉のまんまですよ。できたら“応援歌”になるかもしれないって思ったのが第一の動機です」
 西岡は「おくのほそ道」から被災地に関係のある句と芭蕉が足で旅をしている風景がわかるような句を選んで、それに自分の思いを託しながら曲をつけていきました。そうしてできあがったのが『おくのほそ道 抜粋』です。
 「芭蕉さんが頑張って作った句を僕が勝手に選んで歌にして、お題にそれたことをするわけですから、申し訳ないというのと、やっていいのかしら?という気持ちはありました。でも『おくのほそ道』から好きなように句を選ばせていただきました。そういう意味で“抜粋”というタイトルをつけたんです」
 収録曲には他に「仮設のおくさま」「心はふる里」など震災のことを歌ったものがあって、アルバムのテーマはずばり震災です。今、このアルバムを作りあげて西岡は「良かった」と言う。
 「震災のことを歌にするのはものすごく大変です。でも、僕は体験したことをひとつづつ作品にするタイプなので、このテーマを省いて、次のテーマに、というわけにはいかないんですよ。つらいけど、ちゃんと向き合わないと…」
 そして実際に被災地でも歌ってみた、と言います。
 「仮設で暮らしている皆さんを中心に来てもらうというチャリティー・コンサートでしたが、逆に優しく包んでいただいたみたいで不思議な感じでした」
 3・11に向き合うことで次の光明が見えてきたようです。そのあたりのことは、なぎら健壱が書いた西岡のライフ・ストーリー「五つの赤い風船とフォークの時代」(アイノア刊)を読むとよくわかります。本とCD、セットで読んで聴いて欲しいものです。
 それにしても聴き込むほどに味が出てくる好アルバムです。震災という重いテーマに正面から取り組んだこのアルバムの歌詞は、震災や科学技術の進歩の裏面や時代の変化などを考えさせられる内容ですが、西岡の歌い方や美しい伴奏がそのことを必要以上に重々しく感じさせないで、聴いていて心地好い作品に仕上がっています。このあたりがキャリア・アーティストの“匠の技”と言っていいかもしれません。震災から月日は流れましたが、このアルバムを聴くと、あの時それぞれが感じたことを鮮明に思い出すきっかけになるのではないでしょうか。そこにこのアルバムの価値はあるに違いありません。
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category: 俺が言う!

2012/09/19 Wed. 10:28 [edit]   TB: -- | CM: --

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