富澤一誠の「俺が言う!」
音楽評論家 富澤一誠氏の 「俺が言う!」を掲載していきます。
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聞きにくいことは聞いておかないと、後でトラブルの要因になります。だから、勇気を出して聞くべきなのです!
 聞きにくいことは聞いておかないと、後でトラブルの要因になります。
 人は誰も気にしながらも、その場の雰囲気に圧倒されてか、なぜか聞けないものです。しかし、だからと言って、聞いておかなければならないことを聞かないで先送りにしておくと、必ずといっていいほど、そのことがノドに刺さったトゲのように後々まで引っかかってしまうのです。
 なぜ私たちは、聞いておかなければならないということがわかっていながら、それができないのでしょうか? おそらくそれは、核心に触れる微妙なことなので、相手を刺激させてはまずいとか、相手の機嫌を損ねてはまずいとかと勝手に判断して遠慮してしまうからです。遠慮して避けておけば、話はさしてもめることもなく和気あいあいの雰囲気のうちに終わります。お互い、うまくいったようだ、と感触はいいようです。しかしながら、お互いが引っかかっているところがあります。ノドに刺さったトゲのような引っかかり、それこそがお互いが聞かなければいけないところ、つまり、どちらがどうするのか?と真剣に詰めなければいけないところなのです。
 たとえば、こんなことが実際にありました。ある新聞の連載企画で、エピソードを交えてフォークの名曲物語を書くことになりました。当然のことながら、アーティスト本人や関係者の証言は、書き手である私が責任を持って連絡を取り、取材をして原稿にまとめます。これはこれでいいのですが、問題は名曲のジャケット写真をどうするか、ということでした。当然のことながらページの構成上、ジャケット写真は欲しいところですが、なにせ30年以上も古い時代のものですから、すぐには手に入りません。私が所有しているジャケットは提供するのにやぶさかではありませんが、ないものを私が探してやるとなると、到底手が足りません。そこで手元にないジャケット写真はどうするのか?ということがテーマになりました。新聞社側はお金を用意しますので私にやって欲しいと言いますが、私の方は書く方が精一杯なので、お金をもらったからといって、やれるものではありません。お互いにもめることはわかっているので、どうするのか?言い出せません。だが、ここが避けて通れないポイントです。そこで私は思い切って言いました。「おそらくないジャケットはそんなに多くはないと思います。それとある所はわかっています。蒲田にえとせとらレコードという中古レコード店があって、ここにいけば安く貸してくれます。それから文化放送やニッポン放送のレコード室でも前に借りたことがあります。多少お金はかかりますが…。そちらでやってはもらえないでしょうか」。こうして、話はお互いに上手くまとまりました。
 ジャケット写真は必要です。しかし、気がかりなことは、その写真を誰が集めるかということはきちんと話し合わないとお互いが都合良く考えてしまいがちだ、ということです。私の方は、原稿を書くことは仕事だが、写真を集めるなんて当然担当者の仕事だろう、と常識的に考えています。一方、担当者の方は、私がフォークに関しては専門家なので当然写真など持っているはずだ、と考えています。だから、お互いが“核心”を都合良く考えて、あえて避けてしまうのです。心の片隅で「大丈夫かな?」と思いながらも……。実は大丈夫ではないのです。だから、気がかりなことは勇気を出して、聞くべきなのです。それがトラブルを回避する“転ばぬ先の杖”なのです。
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