阿久悠は死してもなお、岩崎宏美の〈師匠〉である!
「去年の阿久先生の特番、それから全集を出すレコード会社の取材とかを受けているうちに、阿久先生のことをいろいろとお話しをする場所がたくさんありました。そのうちに私の担当ディレクターが『この次は阿久先生のトリビュートでいきましょうか』ということになったんです」
しかし、阿久悠はその生涯で3000曲を越える作品を生み出しているので「選曲は悩みに悩んだ」と言う。選曲の基準は何だったのでしょうか?
「まずタイトルだけを見て『あー、これこれ!』ってわかる曲が良いだろうと。隠れた名曲もたくさんありますけれども、やはり皆さんのお耳に届いている曲の中から選ぼうということで。それから、二番目は私が歌える曲。聴いて好きな曲でも歌えなければしょうがないですからね」
3000曲を上まわる作品から選び出されたのが「北の宿から」「時代おくれ」「街の灯り」「時の過ぎゆくままに」「ジョニィへの伝言」など全12曲。これらの曲を彼女はどんな想いをこめて歌ったのでしょうか? 今回彼女は演歌に初挑戦し都はるみの「北の宿から」を歌いました。当時16歳だった彼女にとって演歌の歌詞は難しいものだった、と言います。
「あの当時の私は女心がわからなかったので本当の意味がわからなかったんです。ようやく意味がわかるようになったので今回歌わせていただいたんです」
河島英五の「時代おくれ」はこれまでたくさんの人がカバーしていますが女性歌手では初めてだとか。
「この曲は男性の生き方を歌った曲だから、女性は歌っていないそうです。今ステージでも歌っていますが、歌うたびに男の人の気持ちがわかるようになってきました」
堺正章の「街の灯り」はすぐに口ずさめた、と言います。
「この曲を歌ってみて、もしかしたら阿久先生って、この歌をお書きになっている頃、どなたかに熱い想いがあったんじゃないのかなって感じました。もう今はお聞きできないけど」
阿久悠に対する彼女の熱い想いが伝わってきます。これまでも男性・女性歌手を問わずにカバーしてきた彼女ですが、今回は阿久作品の魅力のひとつである〈男の生き方、ロマン〉という側面を歌うことで、彼女の中に眠っていた才能が引き出され、結果的にそれが彼女の新しい魅力を引き出したようです。死してもなお、阿久悠は彼女の〈師匠〉です。
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