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「あ」から「ん」までの50音で始まる〈新童話〉「あからんくん」に注目! 

 「なごり雪」「22才の別れ」は、今でも歌い継がれ聴き継がれている、日本が誇るスタンダード・ナンバーと言っても過言ではありません。2曲共に作詞、作曲は伊勢正三。しかも、「なごり雪」は彼が初めて作曲した曲であり、「22才の別れ」は2番目に作った曲というから驚きです。
 伊勢によれば、「なごり雪」は「(天から)与えられたもの」であり、「22才の別れ」はいったん録音した曲が不満で、「売れ線を狙って一晩で書き上げた曲」だという。この2曲のミリオンセラーで、伊勢は“詞で勝負する男”と言われました。
 「あの頃は何もない部屋に自分を閉じ込めて、詞を書くしかないところまで追いつめた。これ以上、手直しできない、どこから読んでも、誰に聴かせても大丈夫だというレベルにまで仕上げたんです」
 このとき、伊勢は「天から与えられた神の啓示」を受け止められるだけの極みに、アーティストとして達していた、ということです。換言すれば、“制作モード”がフルにオンだったのです。
 今思えば、私は伊勢に残酷な質問を投げ続けてきたのかもしれない。
 「『なごり雪』『22才の別れ』のような売れ線の叙情派フォークをなぜ書かないんですか?」と。
 この質問をこれまでに5度していますが、伊勢の答えは毎回異なっていました。1度目は81年2月。ソロ・セカンド・アルバム『渚ゆく』のリリース直前のときでした。
 「『なごり雪』『22才の別れ』のような曲は、書こうと思えばいくらでも書けるけど、今は書きたくない」
 2度目は82年6月。4枚目のソロ・アルバム『Half Shoot』の頃。
 「書こうと思ってももう書けない」
 3度目は83年5月。5枚目のアルバム『ORANGE』の頃。
 「書こうという気がなくなってしまった」
 4度目は87年9月。アルバム『OUT OF TOWN』発表の前後。
 「もはやできないんじゃないかな」
 5度目は90年3月のこと。久しぶりのインタビューの最後に同じ質問をしてみました。伊勢の答えは「書きたいよね」でした。そして、付け加えて言いました。
 「ぜひ書きたい。かけるものならというカッコがあるけどね。何かできそうな気がするんだ」
 制作モードのギアが入ったのです。それから早いもので10年が経とうとしています。今、伊勢は珍しく制作意欲にあふれています。作詞家の松本一起と共同プロデュースでアルバム『あからんくん』を完成。「あ」から「ん」までの50音で始まる童謡詞に伊勢が曲をつけて、大人も子供も聴ける「新童謡」ともいうべき新しい世界を確立したのです。このアルバムを聴いていると、天から与えられた「なごり雪」「22才の別れ」のような素晴らしい歌がまた生まれそうな気配を感じる、のは私だけではないでしょう。
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category: 俺が言う!

2016/03/11 Fri. 19:55 [edit]   TB: -- | CM: --

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