とにかく“すごい歌”です。いい歌はたくさんありますが、「すごい!」と思わせる歌はそうざらにあるものではありません。すごい歌とは何か、と言うと、歌が現実を越えているのです。私たちが潜在下で思っていること、つまり、自分では気づかない本音を、歌にしてズバリと見せてくれるのです。そんな歌を聴いたとき、私たちは「これは私の気持ちそのままだ」と感じて共感を覚え感動するのです。換言すれば、歌で表現されている本音が現実を超えていて、リアリティーをおびているのです。
「吾亦紅」はまさしく歌が現実を超えています。これはすぎもとまさとさんが亡くなった自分のお母さんのことを歌ったものですが、この歌を聴いて心のどこかがズキンと疼く人はたくさんいるに違いありません。「吾亦紅」は間違いなく“家族愛”の歌です。
現実に、映画界、出版界では、親子の愛憎を描いたリリー・フランキーの「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」がベストセラーとなり、テレビ・ドラマ化されたり映画化されました。また、いい悪いは別にして、プロボクシングの“亀田親子”があれだけ話題になったのは、希薄になってしまった“家族の絆”が、亀田親子には異常とも思えるほど強くあったことに、私たちがショックを受けたのではないでしょうか。そして否応無しに、自分にとっての“家族の絆”のあり方を考えて、まともに“家族愛”を考えてみるきっかけになったのです。その意味では、亀田親子は“家族愛”を考えるにあたっての“反面教師”でもあったのです。そんな状況を考えると、家族愛を歌った歌は時代が求めているものです。だからこそ、「吾亦紅」はノンタイアップにもかかわらず、その“歌力”だけで9ヵ月間かけて自力でヒット・チャートをあがってきたのです。
実は4年半程前に私は、家族愛をテーマにしたコンピレーション・アルバム『ラ・ファミーユ〜家族の詩〜』をプロデュースしました。そのときはあまり話題にならなかったんですが、こんな世の中だからこそなのか、今なぜか注目を浴び始めています。おそらく時代が真剣に家族愛、家族の絆を必要としているというか、求めているからこそ、ではないでしょうか。「千の風になって」もノンタイアップで“歌力”と時代の“必要性”が相乗効果となってミリオンセラーとなりましたが、「吾亦紅」も同じようになるかもしれません。歌は世につれ、世は歌につれ、と言いますが、歌の持つ本当の力を時代が今必要としているのです。

