この店の特徴は、イタリア料理、フランス料理をベースにした創作料理で、これが評判が良く、35歳以上の味がわかるハイセンスの人たちに好まれているようです。チーフ・シェフのコーリーは28歳とまだ若いが、キャリア10年の腕の立つシェフで、彼の作り出す創作料理は、ビーフ、ポーク、チキン、フィッシュ、バーガーなどどれを取っても、独特な味わいで、思わず「うまい」と舌鼓を打ってしまうかのようなクオリティーの高さです。また、サラダのドレッシングもひと味違う隠し味、フライドポテトも味わっているうちに「何だろう、これは・・・」と考えさせられる味わいで、一度食べてみたら「もう一度食べてみたい」と思わせる独創性を持っています。おそらく、コーリーの作り出すこのオリジナルな“味”がリピート客を生み出しているのでしょう。
「有名な新聞の料理評論家がお忍びで2度程来て内密に取材をしてくれたんですが、その評論家が味がいいと誉めて書いてくれたんです。これが大きかったと思います。パブリシティーと違って、お忍びで来て実際に食べてから批評しますから、お客さんが信じるのです」
新聞に掲載された日から予約の電話はひっきりなしにかかってきたといいます。その意味では、シェフのコーリーの腕がまず認められたということでしょう。それとこの店のいいところは、10時になるとディナー・タイムからバー・タイムに切りかわるところです。食事を終えてまだ語らいたい人はそのまま残ることができるし、気楽にお酒を飲みたいと思っている若い人たちもラフなかっこうでやって来て楽しむことができます。このバー・タイムの主役がメイン・バーテンダーのデイブです。デイブも30歳そこそこと若いがバーテンダーとしてのキャリアは長く、彼にはたくさんの常連客が付いている程です。そしてマネージャーのクリスは、この店のボスとして店のトータル・マネージメントをしています。クリスは言います。
「コーリー、デイブ、そしてぼくの3人が共同パートナーですが、3人の役割分担が決まっています。コーリーはシェフとして料理を担当、デイブはバーテンダーとしてバー・タイムを仕切り、ぼくはマネージャーとして、店全体の雰囲気作りやお客さんへのサービスなどを担当しています」
クリスの両親は日本人で、彼はカナダ生まれカナダ育ちの日系2世ですが、両親の影響からか、小さなときから日本の時代劇が好きで、毛利元就の<3本の矢>が座右の銘でポリシーとか。1本の矢はすぐに折れてしまうし、2本の矢も・・・。しかし、3本の矢はなかなか折れない。だからこそ、兄弟3人で力を合わせなさいという教訓ですが、クリス、コーリー、デイブはまさに“トロント版3本の矢”と言っていいでしょう。3本の矢の教訓は国境を越えて真実である、ということを知り、私は日本人としての“原点”を再確認しました。
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