富澤一誠の「俺が言う!」
音楽評論家 富澤一誠氏の 「俺が言う!」を掲載していきます。
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時代が必要とする歌が“ヒット曲”となり、時代に選ばれたアーティストが“スター”となるのです!
 時代が必要とする歌が“ヒット曲”となり、時代に選ばれたアーティストが“スター”となるのです。
 かつて“怒れる若者の季節”と呼ばれる時代がありました。1960年代後半のことです。この時代に選ばれたアーティストが岡林信康であり、時代が必要とした歌が岡林の「友よ」でした。
 続く70年代。70年代安保自動延長。それに伴い、挫折感がたくさんの若者たちの心を包んでいきました。そんな時代に選ばれたのが吉田拓郎であり、必要とされた歌が彼の「結婚しようよ」でした。
 80年代になると、バブル時代となり享楽の果てに、全ての物差しが“お金”の世の中になってしまいました。この時代に選ばれたのが尾崎豊であり、必要とされたのが彼の「卒業」でした。
 さらに90年代になると、バブルがはじけ、終身雇用制度が崩れ、就職氷河期を迎えました。そんなファジーな時代に選ばれたのがZARDであり、必要とされたのが彼女の「負けないで」でした。
 では、2000年代、今の時代が必要としている歌とは何か?時代に選ばれるアーティストは誰なのか?ということになります。答えは明確です。今ほど“家族の絆”が問われているときはありません。時代は紛れもなく“家族愛の歌”を必要としているのです。
 家族愛の歌といえば、すぎもとまさとの「吾亦紅」ですが、「吾亦紅」で“泣いた人”にぜひ推めたい“すごい歌”があります。これぞまさに紅涙をしぼると形容していいでしょう。中村ブンの「かあさんの下駄」です。実はこの歌、初めてリリースされたのは28年程前の79年11月28日のことでしたが、そのときは売れませんでした。バブルに向かう世の中にあって、このての“貧乏おしん物語”はお呼びでなかったのでしょう。しかし、「かあさんの下駄」は5月11日に“再発売”が決定しました。なぜ28年も経って再発売されることになったのかというと、まずは中村ブン自身がライブやコンサートでずっと歌い続けてきたこと。そして今の時代背景を抜きにしては考えられません。映画「Always三丁目の夕日」が話題を呼んで昭和の良き時代が注目されていますが、その本質は親子のあるべき姿、特にお母さんの存在というものがたくさんの“共感”を得ているのです。日本人の根底ともいうべき“あらまほしき母親像”をたくさんの人たちが求めているからこそ、“お母さんの歌”が今こそ必要とされているのでしょう。その意味では、今の時代が必要としている歌が「かあさんの下駄」であり、時代が選ぼうとしているアーティストは中村ブンなのかもしれません。
「かあさんの下駄」の内容は、貧乏をしていて男物の下駄しかはくことのできない母を、小学校6年生の男の子が見ていて、かあさんに新しい下駄をなんとか買ってあげたいと、弁当代にともらう中から毎日5円ずつためて、母さんに下駄を買ってあげるという親孝行もの。「かあさんの下駄」は中村ブンの実体験が下じきになっているだけに、真実の持つ迫力があります。今の時代が必要としている歌こそ「かあさんの下駄」である、と私は確信しています。
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