きっかけはどこにあるかわかりません。それがきっかけであるかさえわからないことの方が多いかもしれません。しかしながら、きっかけを与えられたら瞬時にそれを感じとり、勇気を持って一歩を踏み出してみることが重要なのです。
「なごり雪」「22才の別れ」というフォークの名曲があります。共に1975年に大ヒットした曲ですが、今やこの2曲はフォークの名曲という範ちゅうを超えて、日本のスタンダード・ナンバーです。この2曲共、作詞作曲は伊勢正三です。
いずれも、伊勢が“かぐや姫”時代に作ったもので、かぐや姫の4枚目のアルバム『三階建の詩』(74年3月12日発売)に収録されています。しかも驚かされるのは、彼が生まれて初めて作曲した曲が「なごり雪」で、2番目が「22才の別れ」である、という事実です。
しかし、彼はミュージシャンになるつもりなど毛頭なかった、と言います。音楽にさほど興味がなかったし、ギターも上手くなかったと言います。そんな彼が音楽をやるようになったのはまったくの偶然だったのです。
中学生まで彼は美術部でした。高校生になると当然のことながら美術部に入るつもりでいました。ところが、運命とは不思議なもので、高校に行くと応援団の勧誘を受けて、それを断る口実に「音楽部に入ることになっています」という言葉が咄嗟に口をついて出たのです。なぜ音楽部だったのか? これにも伏線はあります。少し前に知り合いの女の子から「音楽部は人が足りないので伊勢君入らない」と誘われていたのです。そんなこともあってか、「音楽部に入ることになっています」という言葉が出てしまったのです。そして、これが決めうちですが、音楽部に入部の手続きに行ったときに出て来た音楽部長が南こうせつだったのです。こうして伊勢はこうせつに会ったことにより、後に“かぐや姫”のメンバーに誘われて、フォーク史に残る名曲を作るようになるのです。
伊勢にとって、きっかけは口から咄嗟について出た「音楽部に入ることになっています」という言葉であり、その結果、こうせつと知り合ったことです。こうして音楽好きでもなかった伊勢が次第に音楽にのめりこんでいくようになり、こうせつの話にのってプロになってしまったのです。人生のきっかけを上手く生かしたところに、伊勢正三という人生が切り開けたのです。その意味では、“運命”というきっかけが「なごり雪」「22才の別れ」という不滅の名曲を生んだのです。人生はきっかけです。そのきっかけを生かすことを心がけましょう。

